広島大学 ビジュアル情報学研究室
薄膜干渉のスペクトラルレンダリング
概要
光は波長が約400nm~800nmの電磁波であり、人間の目が光を検知すると波長の違いに応じた色を知覚します。人間は波長に対して感度の異なる三種類の錐体細胞を持っており、これらの刺激の組み合わせで色を知覚すると知られています。
コンピュータグラフィックスの画像生成においてもこの特性を利用しており、光を赤(R)、緑(G)、青(B)の三成分で表現して照明計算を行うRGBレンダリングが広く用いられています。しかし、RGBレンダリングでは光の干渉や回折などの波長依存性の高い光学現象が含まれるシーンを正確に表示することは困難です。このような現象を表示するには可視光域の波長を密にサンプリングして波長成分ごとに照明計算を行うスペクトラルレンダリングが必要になります。
薄膜干渉は可視光域程度の膜厚を持つ薄膜構造により生じる光学現象で、シャボン玉やタマムシなどで観察されます。薄膜内に入射した光は通過経路の違いにより位相差が生じます。そして、位相の異なる光が重ね合わさることで特定の波長の光が強めあったり弱めあったりします。
通過経路は光の波長や薄膜の材質特性(膜厚と屈折率)によって異なります。Figure1に異なる材質の薄膜をコーティングした球のレンダリング結果を示します。それぞれの球で表示結果が大きく異なっていることがわかると思います。このような違いを材質のデータのみから予想することは困難で、コンピュータグラフィックスによる表示は工業製品などのビジュアルシミュレーションへの活用が期待されます。
業績
学術誌
- 上中喜生, 檜垣徹, Bisser Raytchev, 金田和文:「表面粗さを考慮した薄膜干渉のスペクトラルレンダリング」, 画像電子学会誌, Vol. 52, No. 4, Oct. 2023, 9 Pages. LINK
学会発表
- Yoshiki Kaminaka, Toru Higaki, Bisser Raytchev, Kazufumi Kaneda: "Efficient and Accurate Physically Based Rendering of Periodic Multilayer Structures with Iridescence", In SIGGRAPH Asia 2023 Posters, Dec. 12-15, 2023, 2 Pages. DOI, Project page
- 上中喜生, 三家本雄貴, 檜垣徹, Bisser Raytchev, 金田和文:「スペクトラルイメージベーストライティングによる表面粗さを考慮した薄膜干渉の表示」(ロング発表), In Visual Computing 2022, Oct. 6-8, 2022, 7 Pages. (CGVI優秀研究発表賞, CGVI学生発表賞), LINK
コンペティション
- Yoshiki Kaminaka, Yuki Mikamoto, Kazufumi Kaneda: "Winner of the Computer Graphics Forum 2022 Cover Image Contest", Jan. 5, 2022. LINK